秀峰 SCHOOL REPORT SHUHO SCHOOL REPORT

学校行事

キャリア講演会 ―内田樹先生

本校では先日、内田樹先生にご来校いただき、「転換期を生きる松本秀峰のきみたちへ」と題した特別講演を行っていただきました。

 

内田先生は、思想家・武道家・フランス文学者として幅広く活躍され、長年にわたり大学で教鞭をとられてきました。現在も学びの場を主宰しながら、執筆や教育活動を精力的に続けておられます。

 

本校でも、中学三年生の国語の授業で教科書に掲載されている先生の「働くことの意味」という文章を扱っております。この示唆に富んだ文章に触れ、自らの進路や生き方を考える指針としている生徒も多く、著者ご本人の生きた言葉に直接触れることができた今回の講演は、生徒にとっても教員にとっても大変貴重な機会となりました。

 

講話ではまず、私たちが日々使っている言葉が、長い年月をかけて蓄積されてきた「言葉のアーカイブ」であることが語られました。過去の言葉に触れ、自分の中の言葉の蓄えを豊かにしていくことが、思考を深める土台になるというお話は、多くの生徒に新たな視点を与えました。

また、現代社会では「正しさ」や「賢さ」が重視されがちである一方で、本当に重要なのは「人間として大きくなること」であると指摘されました。異なるものや一見無関係に見えるものを自分の中に取り込み、矛盾や違いを抱えながら他者と共存していく力こそが、人間の器の大きさであると説かれました。

さらに、AIの進展によって社会が大きく変化する中で、人間に求められるのは知識や論理だけではなく、身体を通じた経験や他者との関係の中で生まれる力であることも強調されました。予測不能な他者と関わりながら何かを生み出していく営みこそが、これからの時代における人間の重要な役割であるという言葉は、印象深いものでした。

 

講話の中で特に強く語られたのが、「自分の成長を最も妨げるのは、自分自身と友人である」という点です。私たちは周囲との関係の中で無意識に自分の「キャラクター」を作り上げてしまいますが、その枠にとどまろうとすることが成長を妨げてしまうと指摘されました。「らしくない」と言われることを恐れず変化し続けること、そして互いの変化を受け入えられる関係こそが大切であると語られました。

 

講話の最後には、価値観や背景の異なる他者と、必ずしも共感できなくても協働していくことができる状態こそが「大人である」というお話で締めくくられました。生徒たちにとって、これからの社会を生きる上での本質的な示唆に富んだ、大変有意義な時間となりました。

 

内田先生のご講演は、自分を固定せず、他者との関係の中で変化し続けることの大切さを改めて考える機会となりました。

ご多忙の中ご来校いただき、貴重なお話をお聞かせくださった内田先生に、心より感謝申し上げます。

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